生きかたよのなか教室

生きかたよのなか教室

弁当作りを通じて子どもたちを育てる取り組み「子どもが作る弁当の日」にかかわる大人たちが、自炊や子育てを取り巻く状況を見つめる連載コラム。旭化成で人財育成の仕事に携わり、退職後は学校と企業・地域の橋渡しをしている水永正憲(みずなが・まさのり)がこれからの教育を考える——。

教え込むのではなく、自ら学ぼうとする子どもを育てる

「どう教えるのかではなく、自ら学ぼうとする子どもたちをどう育てるか」
これからの学校教育で、大事だといわれていることです。私の暮らす宮崎県内でも、先生たちが、さまざまなアイデアと工夫で子どもたちにいろいろな課題解決に挑ませ、「答えのない問題に答えを見いだす力」を育もうとしています。

私はメーカー退職後、学校と企業・地域の橋渡しのお手伝いをしています。社会人が学校に出向いて、働く喜びと苦労を語る、キャリア教育「よのなか教室」です。

私が関わっている延岡市のある中学校では、中学3年生を対象に、通年で課題解決型学習(PBL、Project Based Learning)を行っています。

中学校での特別授業

中学校での特別授業

テーマは「10年後の世の中と私」。若い社会人をメンターとして月1回ほど学校に呼び、子どもたちの質問や疑問に答え、アドバイスする取り組みです。

今年で3回目(4年目ですが、一昨年はコロナ禍で中止)ですが、親や先生以外の大人と半年間、真剣にやり取りを重ねてきた子どもたちは、間違いなく変化します。高校入試の面接でも、問題を深く理解したり実践したりした経験をもとに、それらを人に伝える力を遺憾なく発揮。高い評価を得ていると聞きます。「自ら学ぼうとする意欲」が育まれているのです。

今年8月4日、5日には、宮崎市でNIE(教育に新聞を、Newspaper in Education)の全国大会が開催される予定です。NIEの活動でも、新聞記事を先生が選ぶのではなく、子どもたちが自分で新聞を読んで関心のある記事を選び、それについて考えを深めたり、人と対話したりすることが大事だといわれています。ここでも、子どもたちの主体性、自ら学ぼうという意欲を、いかにして引き出していくかが大事にされているのだと思います。

子どもが作る「弁当の日」という活動があります。私は、現役を離れる少し前に、「弁当の日」と出会いました。宮崎県では2010年、当時の宮崎県教育長だった渡辺義人さんのリーダシップのもと、宮崎県下の小中高において「弁当の日」の取り組みが開始されました。翌年には、10年間を見据えた「第二次宮崎県教育振興基本計画」の中に「みやざき弁当の日の推進」が位置付けられたおかげで、現在も県下の多くの学校で「弁当の日」の実践が続いています。

「弁当の日」とは、「何を作るかを決めることも、買い出しも、調理も、お弁当箱に詰めるのも、片付けも、すべて子どもがします」というルールの食育です。これは、子どもたちの主体性を引き出す素晴らしい仕組みだと、「弁当の日」に出会った当初から感じていました。「弁当の日」の実践は、自然に子どもたちの主体性を引き出していくのだと思います。

人は、頭で考えるだけでは課題を乗り越えられません。体に感じる何かがなければ行動に移せないし、困難な壁にぶつかった時にそれを乗り超えようという意欲も湧いてこないものです。

体で感じる何か。
それこそが主体性を生み出すのであり、生きる力を育むのだと思います。

「弁当の日」の経験を積み重ねた子どもたちは、自分の体で、何かを感じ取っているに違いありません。「弁当の日」の実践が、生きる力を育むキャリア教育と一体になって取り組まれていくことを心から願っています。

 

水永正憲(みずなが・まさのり)
1949年、都農町出身。71年に九州大学法学部卒業後、旭化成入社。(東京本社)労務部長や延岡支社長、取締役常務執行役員(人財・労務担当)などを歴任。2009年、「弁当の日」と出会い、延岡市で竹下和男先生の講演会を開催。13年退職後日向市キャリア教育支援センター長に就任、以後宮崎県内の小中高でキャリア教育の支援に携わる。現在は、宮崎県キャリア教育支援センター トータルコーディネーター、延岡市キャリア教育支援センター長を務める。

#「弁当の日」応援プロジェクト は子どもが作る弁当の日の実践を通じて、健全な次世代育成と持続可能な社会の構築を目指しています。より多くの方に「弁当の日」の取り組みを知っていただき、一人でも多くの子どもたちに「弁当の日」を経験してほしいと考え、キッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、ハウス食品グループ本社、雪印メグミルク、アートネイチャー、東京農業大学、グリーン・シップとともにさまざまな活動を行っています。