子どもたちの生きている時間の中で、学校や塾に関わる「まなびの時間」が増えています。生きていくための基本的な衣食住に関する「くらしの時間」は減っているというのに…。
香川県の小学校で竹下和男校長(当時)は、子どもたちに「くらしの時間」を取り戻したほうがよいと考え、2001年に子どもが作る“弁当の日”を始めました。
子どもが年に数回、自分でお弁当を作って学校に持ってくるという取り組みです。何を作るかを決めることも、買い出しも、調理も、お弁当箱に詰めるのも、片付けも、すべて子どもがします。親も先生も、その出来具合を批評も評価もしないという約束です。
大人は子どもが包丁や火を使うことを「危ない」「失敗したら」などと心配し、あるいは親が「やったほうが早い」「教えるのは面倒」と手を出してしまいがちです。自信がなくて親に手伝ってもらう子どももいます。
でも「ぜんぶ自分で作った」という友だちを見ているうちに「次は自分だけで作ってみよう」と決意する時がやってきます。だから、それはかまわないのです。
子どもには、自分で伸びようとする力が備わっていることを思い出してほしいのです。大人はじっと見守ってあげてほしいのです。じっと見守ることができるのは大人の力です。