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弁当作りを通じて子どもたちを育てる取り組み「子どもが作る弁当の日」に関わる大人たちが、自炊や子育てを取り巻く状況を見つめる連載コラム。長年動物たちの健康を歯から見つめる小児歯科医の岡崎好秀さん(通称おかどん)の動物たちの歯についての話———。
中国3千年を誇る人相学に、面白いことが書かれていました。
額は初年運を表します。「額の広い子どもは、将来賢くなる」とよく言います。目から鼻は中年運を表します。中年は人生において一番仕事のできる時期なので、目が輝いているかどうかを見るのでしょう。
一方、口元は晩年運を表すのです。年を取っても噛める歯があれば、老いてますます意気盛ん…ということなのです。硬い食べ物しかなかった古代人にとっては、まさに「歯が命」であったのでしょう。現代では、歯科医院での定期健診で噛める歯を維持できれば、晩年運はOKといえるのかもしれません。
さて現在、日本人の平均寿命は男性約81歳、女性は約87歳(2020年)。65歳以上人口が、全国民の21%を超える超高齢社会となっています。
実はこの高齢化は、人間社会だけでなく、動物園の動物の間でも進んでいます。
ある動物園のベンガルトラは、人間の年齢に直すと100歳を超えていますが、元気です。このベンガルトラが元気で長生きできる背景には、食べ物や飼育環境の改善など、現場の方々のたゆまぬ努力があったのでしょう。
一方、獣医師から見ると、動物の間でかつては見られなかった病が増えているそうです。その一つが、歯に関するものです。
歯周病などで歯を失うことは、寿命に影響します。これは動物も同じ。大型肉食獣などは、全身麻酔をして定期健康診断を行うのですが、その時に歯石の除去なども行っています。
動物園では、昨日まで元気だった動物が、翌朝には死んでいることがあります。そもそも野生動物は、どれだけ体調が悪くても、他の動物に気付かれるようなことはしません。気付かれると殺されるからです。
例えばライオンは、弱ったシマウマから襲います。当然、動物園の動物も同じ習性を持っています。きっと亡くなった動物たちは、体調が悪くても最後まで我慢して息絶えたのでしょう。
獣医師からすれば、具合の悪さにもっと早く気付いてやることができれば、助けられたのではないかと考えます。
では、どこを見れば体調の悪さが分かるのでしょうか?
それは“食欲”です。
そもそも自然界には食物が少ないので、食欲がないというのは、かなり体調が悪いことを意味します。
では、食欲がない動物がいたら、まずどこを見るのでしょうか?
それは“口の中”の状態です。
動物園の高齢のあるカバが、数年前の秋に食欲をなくしました。口の中を見ると、下あごの歯ぐきが歯周病で腫れ、赤くなっていました。どうやら噛むと、上の歯が当たって痛むようです。
そこで獣医師は、安全に気を付けながら、金属製のヤスリで歯を削りました。すると痛みがとれ、カバは食欲を取り戻して元気になりました。
また、歯周病のため、臼歯と臼歯の間にたくさんの草が詰まっていました。これを取り除かないと、また具合が悪くなります。そこで獣医師と飼育係は毎日、大型のピンセットで歯に詰まった草を取り除き、歯ブラシで磨いています。
おかげでこのカバは現在も元気で、大きな口を開け、子どもたちを楽しませています。
やはり、動物の世界でも“歯が命”なのです。
岡崎好秀(おかざき・よしひで)
国立モンゴル医科大学客員教授。前・岡山大学病院小児歯科講師。
1978年愛知学院大学歯学部卒業、同年大阪大学歯学部小児歯科、1984年岡山大学病院小児歯科を経て2013年より現職。歯学博士。日本小児歯科学会専門医・指導医、日本障害者歯科学会認定医、日本口腔衛生学会認定医、日本禁煙科学会評議員・学術委員。著書に『教えて恐竜! ぼくたちの大切な歯』(少年写真新聞社)、『動物おもしろカミカミうんち学』(少年写真新聞社)、『カミカミおもしろだ液学:だ液は健康を守る“まほうの水”』(少年写真新聞社)ほか多数。
#「弁当の日」応援プロジェクト は「弁当の日」の実践を通じて、健全な次世代育成と持続可能な社会の構築を目指しています。より多くの方に「弁当の日」の取り組みを知っていただき、一人でも多くの子どもたちに「弁当の日」を経験してほしいと考え、キッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、ハウス食品グループ本社、雪印メグミルク、アートネイチャー、東京農業大学、グリーン・シップとともにさまざまな活動を行っています。