4月に自主上映開始の映画『弁当の日』と同時進行で取材した書籍『子どもが作る弁当の日 めんどくさいは幸せへの近道』(文藝春秋)が2020年11月に発売になった。サブタイトルはどちらも、「めんどくさい」は幸せへの近道。この言葉を監督の安武信吾さんから初めて聞いたのは、母になった弁当の日卒業生の取材をするために、福岡から香川に移動中の新幹線の車中だった。「城戸さん、これ、どう思いますか?」。そう言って、監督がノートに書いたのが『「めんどくさい」は幸せへの近道』という言葉。「すごくいいじゃないですか!」。即答だった。何より、この「めんどくさい」という言葉がよかった。私はこの取材をはじめるまで、弁当初心者、家事料理苦手な自称「だめだめ母ちゃん」。弁当の日の取材をしながらも、理解するまでには時間がかかった。本はそんな「わからない」立場の人たちに寄り添いたいという思いを込めて書いているつもりだ。だから、監督が提案したこの「めんどくさい」っていう言葉に、私はちょっとほっとした。いま、本を書き終えて、私の弁当の日に対する思いは……。「めんどくさい、でも楽しい!」これからも、めんどくさがりながら、弁当の日、楽しんでいきたいと思う。
ノンフィクションライター 城戸久枝