日本全国の小・中学校で学校給食が整ってきました。いくつかの府県を除いて、児童・生徒数の95%以上が学校給食を食べています。もう10年以上も前に「給食費を払わされているのに、食べるときに“いただきます”を言うよう子どもに指導するのはおかしい」という保護者の訴えがあり、炎上したことがあります。「善意でしてもらったことに感謝の気持ちで言うのなら分かるけど、給食費を払っているのだから食べられるのは権利なのだ」というのが主張でした。
献立から片付けまで、子どもだけに取り組ませる「子どもが作る“弁当の日”」の提唱者である私が、この食育実践を始めたのは2001年です。19年後、学校数で言うと5%が取り組んでいます。私が“弁当の日”をスタートさせたのは「学校給食の向こう側」が分かる子どもを育てることでした。私は学校給食賛成派なのです。
年間で数回の“弁当の日”に取り組んだ学校で何が起きたのでしょう。
「毎日、家族の食事を作ってくれているお母さんに感謝したい」
「自分が作った弁当より、学校給食は断然安い」
「給食は献立も多いし、栄養バランスもとれているし、おいしい」
「嫌いなメニューもあるけれど、作ってくれた人の気持ちが分かるから完食する」
夏休み中に、3県の学校給食研究大会に講師として招かれました。そこで、「自分がおいしいと思った給食を、自宅で家族にも振る舞いたいと思う子どもだちを育ててほしい」と訴えました。子どもたちはいずれ親になります。「こんなおいしい食事をわが子に食べさせたい」と思い行動に移すことが、生きる力を育てることになります。
日本各地の学校給食には、必ず郷土料理の献立が入っています。そして、その郷土料理を作れない親世代が多いくいるという実態があります。“弁当の日”や学校給食を通して、地域の郷土料理を次世代に繋ぐことができるよう、積極的に取り組まねばならない時期が来ていると思っています。それは日本の農業や水産業を活性化し、家族の絆を深め、子どもが健やかに育つ環境を整えていくことでしょう。
文・子どもが作る“弁当の日”提唱者 竹下和男