飢餓対策向けに進化してきた人類
「腹がへっては戦ができぬ」ということばがあります。エネルギーがなければ活動はできないということです。
人類の歴史を数万年前にまでさかのぼると、死因のダントツ1位は餓死だそうです。だから身体は、数万年かけて飢餓対策を強化する方向に進化してきました。
例えば、飢餓状態の時にも血糖値を上げるホルモンはアドレナリンなど4種類ありますが、飽食状態の時に血糖値を下げるホルモンはインスリンしかありません。餓死が多かった時代には必要のないホルモンでした。
ところが、現代の日本では、その進化した機能があだになって、肥満や糖尿病に苦しむ人が増えています。簡単に血糖値を上げる糖質(特に砂糖)が日常の食べ物に多く含まれている状況なんて、ここ70年くらいのことです。めずらしく多く食べられた時は、活動したあとに余ったエネルギーを脂肪に変えて体内に蓄える能力まで人間は獲得しているのです。
地元食材で家庭料理を作る楽しさを
「巣ごもり生活」がコロナ禍で広がっています。そのために外食産業が経営的に大変な危機に陥っています。適切な外食によって、健康を保つことができていた人たちのことを心配しています。
卵焼き器がよく売れているというニュースがありました。買い替えよりも、新規に料理を始めた人が多いということでした。家族で料理を作って食卓を囲むことの教育効果の大きさを知っている私には、とてもうれしい現象です。
でも、もう少し踏み込んでデータを読むと、よく売れているのは、食事の材料よりもスイーツの材料の方が多い実態が浮かんできました。子どもはお菓子作りには強い興味を示します。それは子どもの身体が、大人よりも糖質をエネルギーとする解糖系が多い時期というのが原因の一つです。でも台所に立つ良い意欲付けにはなります。
これを機会に、地元の旬の食材で簡単な家庭料理を作る楽しさを経験させることがおススメです。「子どもが作る弁当の日」は、20年かけてその実効性を示してきました。
つい先日、料理を苦手としている母親たちの声を聴く機会がありました。料理を楽しむ教育が、70年近く、なされてこなかっただけのことです。気が付いた人から行動を起こせばいいのです。男女を問わず、年齢を問わず。
文・子どもが作る″弁当の日″提唱者 竹下和男