「弁当の日」モデル自治体

宮崎県

MIYAZAKI PREFECTURE

導入時担当者

児玉善彦
こだま・よしひこ

教育庁スポーツ振興課健康教育担当指導主事(導入当時)

「弁当の日」推進の始まり

Q 自治体ではどんな業務を担当されていますか?

現在は宮崎県小林市立南小学校の校長をしていますが、「弁当の日」導入当時は、宮崎県教育庁スポーツ振興課健康教育担当指導主事をしていました。

Q 「弁当の日」を知ったきっかけは?

2010年1月11日に、延岡市で竹下和男氏を招聘して食育講演会が行われたんです。県教育委員の水永正憲氏(旭化成株式会社取締役兼常務執行役員)よりお誘いがあり、当時の渡辺義人県教育長の随行として視察に行きました。この時、渡辺教育長が取り組みに感銘を受け導入を決意されたことが、宮崎県の公立学校における「弁当の日」推進の原点です。

Q その後、どのように「弁当の日」を推進していきましたか?

「食に関する指導の手引」に「弁当の日」の解説を盛り込むよう指示されました。文部科学省が手引を改訂するタイミングで宮崎県版を作成し、3月末に完成させて各学校に配布することになっていたんです。原稿は9割ほど完成していて、まさに“急遽”という展開でした。「弁当の日」の概要や実施までの手順、留意事項、実践事例などを、9ページにわたって掲載しました。
普及の第一歩として、各市町村の教育長の理解と協力を得ようと、2010年度当初の市町村教育委員長・教育長会議の場で、県教育委員会として「弁当の日」を推進することを渡辺教育長自ら表明されるとともに、竹下和男氏を招聘しての講演も実施されました。県教育庁各課・室はもとより、各教育事務所や研修センター、市町村に派遣されている指導主事らが一堂に会して行われる研修会でも、「弁当の日」の意義や具体例、留意点などについて説明し、理解を促しました。
2009年度に、食に関する国庫事業(文部科学省「栄養教諭を中核とした食育推進事業」)を開始していました。これを「のびのび食育実践事業」と名付け、自治体に再委託していたのですが、2010年度から再委託先での「弁当の日」の取り組みを必須とすることにしました。

Q トップダウンで推進したということでしょうか

いえ、何より自分たちがまず体験する必要があると思ったので、「弁当の日」の所管課であるスポーツ振興課職員で「弁当の日(率先炊飯デー)」を実施したんです。2010年4月のことでした。
スポーツ振興課だけの取り組みでしたが、当時の飛田洋教育次長(渡辺教育長の後任の県教育長)も参加されました。 取り組み後は、そのときの様子について、写真や課員のコメントを教育庁各課に情報提供し、竹下和男氏にも伝えました。
これを機に、以後、スポーツ振興課では毎月16日の「ひむか地産地消の日」に「弁当の日」を実施することが慣例となり、随時、県教育委員会のフェイスブックでも様子を発信しました。

スポーツ振興課が行った「率先炊飯デー」の啓発チラシ

第1回「率先炊飯デー」でスポーツ振興課職員が作ってきた弁当

Q まず自分たちがやってみる、ということですね。

はい、そうなんです。各市町村教育委員会の次は、各所属長、「弁当の日」推進に直接携わる教職員に説明する研修会を計画していましたが、本県で家畜伝染病の口蹄疫が猛威を振るったことから、やむなく中止になりました。
そこで、「率先垂範」の思いと「口蹄疫からの再生・復興への願い」を込めて、2010年10月25日に「県内産の食肉の使用」をテーマとして掲げ、県教育庁各課・室職員による「弁当の日」を行ったんです。
当時、県教育庁にあった10の課・室全てから、119人の参加がありました。もちろん、渡辺教育長も弁当を持参し、特にお声かけをしたわけではないのですが、情報を聞きつけ、近藤好子教育委員長も、教育長と差し向かいで手作り弁当による会食を楽しまれました。このときの様子は報道各社に取材され、テレビのニュースや新聞で大きく取り扱っていただいたので、広く「弁当の日」を啓発する機会としても、とても効果的でした。

弁当を挟んだ渡辺教育長(左)と近藤教育委員長

報道各社の取材を受けるスポーツ振興課

このときの様子を水永氏と竹下氏に情報提供したところ、以下のようなお返事をいただきました。

 

日時 2010/10/27(水) 13:34

差出人 水永 正憲

標題 感動しました

ご連絡ありがとうございました。
素晴らしい取り組みに感動致しました。

教育長自ら弁当を作ってこられたことは特筆に価する話ですね。

本気度が伝わってきて、しびれました。日本全国でもはじめての試みだと思いますし、子供たちや郷土宮崎への熱い想いが感じられて、涙がこぼれました。

これからさらに県下での取り組みが広がり、様々な新しい物語が生まれることを心から祈念しております。
ほんとうにありがとうございました。

 

日時 2010/10/26(火) 22:37

差出人 竹下 和男

感動です。 新聞記事、動画に宮崎県教育委員会の真剣さを感じました。

“弁当の日”応援団である宮崎県のうどんやさん(船ケ山)が、たった一人で1700人集める!と4月10日にホールを借りて動き始めました。“弁当の日”で成長する二人の娘さんを主人公にした感動的なスライドショーも自作し講演もしています。この企画に、共同通信社、旭化成、県教育委員会も連携して、いよいよ本格的に動き始めています。教育長さんとお会いしての興奮のメールも届きました。
私も全国で講演しながら、宮崎の宣伝をしています。
口蹄疫で苦しんだ宮崎県だからこそ伝えられるメッセージは強いです。

Q 県教育庁挙げての「弁当の日」に、職員が積極的に関わっていったのですね。

その通りです。取り組みの輪が一気に広がり、県内各地で独自の取り組みが行われるようになっていきました。
ほどなくして、知事部局で食育及び地産地消推進を担う「営農支援課」を中心に、県農政水産部(9課2室)の職員による「弁当の日」(食育・地産地消実践プロジェクト 農政水産部「弁当の日」)が、原則、毎月16日「ひむか地産地消の日」に実施されるようになりました。
2010年10月には、宮崎市PTA協議会が母親会員研修会で「弁当の日」講演会を実施しました。
翌月には、みやざきの食と農を考える県民会議(県営農支援課が事務局)主催による「宮崎県食育地産地消推進大会」の会場で、「笑顔つながる『みやざき弁当の日』写真展」の展示や表彰式を実施しました。イベント名は変遷していますが、この取り組みはその後も継続しています。
さらに、県福祉保健部こども政策課主催による、宮崎市の商業施設での「未来みやざき子育て応援フェスティバル2011」の会場で、「弁当の日」に関する展示などを行いました。複数のブースを展開したことから多くの人手が必要となり、県内の栄養教諭や学校栄養職員にも多数協力いただきました。

笑顔つながる「みやざき弁当の日」写真展

子育て応援フェスティバル2011

Q 学校での実践はどのように広げていきましたか?

2011年度から3年間は、「弁当の日」に関する県単独事業「自分で作る『みやざき弁当の日』推進事業」を創設して推進したんです。2011年は木城町、2012年は高千穂町、2013年はえびの市に事業を委託しました。
委託した市町には、シンポジウムを開催すること、小・中・高合わせて10校の実践校を指定して取り組みを推進すること、取り組みの成果をまとめたパネルを作成することなどをお願いしました。
ここで作成いただいたパネルは、県立図書館や市町村立図書館など要望のあった施設、知事部局による「宮崎県食育地産地消推進大会」(営農支援課)や「未来みやざき子育て応援フェスティバル2011」(こども政策課)のイベント会場など、巡回展に活用しました。

Q どんどん広がりますね。広報活動なども行いましたか?

ええ、教育委員会として広報や啓発活動もどんどん行いました。2010年度から教育委員会広報テレビ番組「のびよ!みやざきっ子!」(UMK)で、学校における「弁当の日」実践や、県教育庁(スポーツ振興課)主催のシンポジウムなどの様子を定期的に放送するようになりました。以後、現在に至るまで、草創期の頻度には至らないまでも、その後放送が開始された「みらい みやざき 学び隊」(MRT)も含め、随時「弁当の日」に関して取り上げて放送しています。
教育委員会主催の研修会や「弁当の日」の出前講座といった啓発活動も行いました。高齢者施設からの依頼で、高齢者を対象に講話をすることもありましたね。私が担当しただけでも、100回くらい講話をしています。
2010年度から、公立学校を対象に「弁当の日」実施状況の実態調査も始めました。当初は、実態を把握して以後の施策に生かすだけでしたが、2015年度からは結果を公表し、結果の概要に関する周知文書も各学校等に発出するようにしました。これは現在も継続されています。
そのほかにも、生涯学習課が「子どもの生活リズム向上支援推進事業」の一環として、県内全ての公立学校のPTAを対象とした竹下和男氏の講演会を、2010年12月23日に宮崎県武道館で実施しました。これに、口蹄疫の関係で中止となった春の研修会に参加いただく予定であった各公立学校長や食育担当者らにも参加していただきました。
2011年2月4日には、学校において中核となって健康教育を推進する立場にある全保健主事対象の宮崎県保健主事研修会で、宮崎市在住の民間の実践家である船ヶ山清史氏を招いて、「弁当の日」講演会を実施しました。

教育委員会の広報テレビ番組

宮崎県における「弁当の日」実施率等の推移(市町村立小中学校及び県立学校)

Q そのほかに、特筆すべき取り組みはありますか?

2011年4月10日に、前出の船ヶ山清史氏が立ち上げた「弁当の日」in 宮崎実行委員会主催によるイベントが宮崎市民文化ホールで開催されました。
「1700人が大集合~ひろがれ『弁当の日』in宮崎」では、西日本新聞社編集員の佐藤弘氏や竹下和男氏による講演、九州大学大学院農学研究院助教の佐藤剛史氏のワークショップ、佐藤弘氏をコーディネーターとしたクロストーク「宮崎の決意!」などが行われました。県教育委員会としても、イベントを後援し、学校や市町村教育委員会に対する参加の依頼、「『弁当の日』笑顔の写真展」のパネル展示などで連携し、担当指導主事は、打ち合わせ会や各所に配付する案内文書の準備の作業にも参加しました。
このイベントには約1800人の参加があり、クロストークでは、渡辺教育長もコメントを求められ、発言するという一幕がありました。

宮崎市民文化ホールで開催された「1700人が大集合~ひろがれ『弁当の日』in宮崎」

同年、飛田洋教育次長(渡辺教育長の後任の教育長)の発案により、JAみやざき中央会とコラボレーションして、「笑顔つながる『みやざき弁当の日』写真展」が始まりました。初年度は、本県で高病原性鳥インフルエンザが発生した影響から、県教育委員会単独で開催しましたが、その後、現在に至るまで共催しています。全県下の公立学校から写真を募集し、審査を経て、表彰式を行っています。ちなみに、参加者全員に対する粗品や入賞者(10組)に対する記念品(農産物の詰合せ)は、JAみやざき中央会が提供してくださっています。

写真展入賞作品:東京五輪のロゴおにぎり

写真展入賞作品:学校丸ごと!校長先生も!

写真展入賞作品:みんなでシェア!持ち寄り「弁当の日」

「弁当の日」の条例化

Q 県が策定する教育基本計画に「弁当の日」を盛り込んだそうですね。

そうなんです。「第2次宮崎県教育振興基本計画」が、2011年7月(2015年9月改訂)に策定されました。その「健やかな体を育む教育の推進」という施策の中に、「食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付け、生涯にわたって健やかな心身を育むための基礎を培うため、家庭や地域などと連携しながら、学校における食に関する指導の充実や『みやざき弁当の日』を推進します。」と明記しました。
この基本計画は、「宮崎県行政に係る基本的な計画の議決等に関する条例」により県議会の議決に付され、全会一致で可決承認されました。このことは、後の「宮崎県食の安全・安心推進条例」制定の前座的役割を担うことになりました。
2019年6月に、策定された最新の「宮崎県教育振興基本計画」では、「弁当の日」は、本県が「3つの重点取組」の一つとして掲げている「いのちの教育」との関連において、「健康教育(食育)」における取り組みの実践例として示されています。

 

Q 県の条例にも「弁当の日」を組み込んだと聞きましたが?

2015年4月1日に施行された 「宮崎県食の安全・安心推進条例」がそれです。
2013年に、宮崎県は、フードビジネスの観点から「食の安全、安心、健康『日本一』のみやざきづくり」をテーマに取り組みを推進しており、県の姿勢を明確に示す方法として条例の話が持ち上がったと聞いています。
条例化は、県庁内(教育庁を含む)の関係各課の担当リーダーらで構成された「食の安全・安心推進検討プロジェクトチーム」における検討を通して進められました。
当時の担当者に確認したところ、食の安全安心と食育・地産地消を一体的に推進するために、教育、福祉、農政部門の取り組み内容を網羅して条例に盛り込んだとのことです。条例そのものは、普遍的で総括的な内容を定めるものですが、「弁当の日」は、「宮崎らしさ」を象徴するものの一つとして明示されることになったそうです。
条例の「第15条 食育の推進」の中に、下記のように規定されています。

・県は、県民が食品の安全性に関する知識及び安全な食品を自ら選択する力を習得することが食の安全・安心の実践に資することに鑑み、食育を推進するものとする。

・県は、県民への食育の浸透を図るため、自分で弁当を作る弁当の日を推進し、その周知及び県民への定着を図るものとする。

県ホームページ上に、「食」に関するページも創設しました。ここには、「弁当の日」の概要や県内における実践校関連の統計情報、「自分で作る『みやざき弁当の日』推進事業」関連の成果物、「笑顔つながる『みやざき弁当の日』写真展」に寄せられた作品、県版「食に関する指導の手引」などを掲載しました。

宮崎県食の安全・安心推進条例

宮崎県教育振興基本計画

Q 条例化に至るまで、大変だったことは?

県下各学校への普及です。いかにスムーズに「弁当の日」を受け入れていただけるか、苦労とは言わないまでも、不安というか、手探り感はあって、それなりに神経を使いました。ただでさえ多忙な学校現場に、新たな取り組みとして、通常の教育活動や業務に加えて実施していただくわけですから、当然、単に「良いものですからやってください」的なアプローチでは失敗することは分かっていました。
実際、正直なところ、学校に呼ばれて職員を対象に説明する際に、冷ややかな雰囲気を感じることもありました。学校にとっての「必要性」や学校において取り組むことのメリットをいかにご理解いただくか、ということには腐心した記憶があります。
このようなことから、説明の際には、当時全国的に指摘されていた、特に若い世代における食に関する課題、食品ロスなどの社会問題、宮崎県における食に関する長年改善されない課題(肥満、むし歯など)、学習指導要領及び食に関する法令の規定、学校で学んだはずの食育がなかなか実生活に繋がっていかないという現実、「弁当の日」に取り組むことによって子どもや家庭にもたらされるメリット、県教育委員会職員による実践の成果、既に実践している学校の事例など、いろんな切り口から必要性を訴え、食に関する指導を充実させるための極めて有効なインパクトのあるツールとして「弁当の日」を売り込みました。

Q 条例化されて良かったことは?

私としては、率直に、学校だけに留まらず、県民全体として取り組む方向性が明確に打ち出されたことが良かったと感じています。
「弁当の日」は家庭で取り組むので、保護者の理解と協力は欠かせません。「弁当の日」が、全ての学校で行われ、欠かせない教育活動として定着し、各学校の教育課程の中に組み込まれ、永続していくことを目標に種々取り組みを推進した中、条例化されたことによって、学校以外のたくさんの事業所で「弁当の日」が取り組まれるなど、「弁当の日」が広く知られるようになり、全県的に気運が高まったことは、保護者の理解を促すという意味においてもありがたいことでした。
何よりも、狭い教育現場に限らず、県民みんなで「弁当の日」に取り組み、喜びを実感し、楽しむことができたことも、とても良かったと感じています。
当時の渡辺教育長は、次のようなことを話されていました。

当時の渡辺教育長の言葉

「弁当の日」は、トップ(為政者)が交代することによって命運を左右されるものであってはならない。
トップが代わると、それまでの色々な取り組みの熱が冷め、潮が引いたように衰微していきやすい。時には前任者の施策が全否定されることすらある。
大事な「弁当の日」の取り組みを、そんな憂き目に遭わせてはならない。そこで一計を案じた。「弁当の日」の推進をきっちり書き込んだ形の教育振興基本計画を作り、それで議会の議決に付してはどうだろう…と。
県民の代表者で構成される議会が認めれば、県民の総意として、言わば「県是」として「弁当の日」を行うという決意表明になる。
仮に時のトップが、基本計画から「弁当の日」を除外しようとしても、納得のいく説明などできないだろうし、何よりも議決の議決という重く頑丈な歯止めがかかっている。できっこない。
単なる一過性の掛け声ではなく、行政の責務として「弁当の日」の取組みを位置付け、県議会のお墨付きを得ること。ここが一番の知恵の絞りどころだった。大袈裟に言うと、「弁当の日」の実質的な推進条例化を狙ったということだろうか。
あとは、現場の先生方の熱意と努力がとりわけ重要である。マンネリ化を避けるための不断の仕掛けも必要だ。
「弁当の日」は、人と人との心をつなぐところが最も良いところと思うが、そのほかにもいろんなものとつながり、その価値を発見することができる。
百の議論より、一つの実行。必ずや「やって良かった」と思われるはず。

実施に向けたアドバイス

Q 自治体を巻き込むためのアドバイスを。

県教育委員会が各市町村を巻き込むという視点で述べるならば、以後の展開も見据えると、やはり「押しつけ」はまずいなと思っていました。特に「弁当の日」に関しては、受け手側からは「トップダウン」と見えていたかもしれませんが、私たち担当としては、啓発・説明に徹し、意義や利点をご理解いただきながら、ご協力いただくという姿勢を基本に、取り組みを推進しました。
例えば、「県教育委員会で決めたので、やってもらう必要があります」というような頭ごなしの伝え方をしたことは一度もないと思います。せっかくの「弁当の日」に、取り組んでいただく前からケチがつくことだけは避けたいといつも考えていました。
また、関係者に対する説明を、手順を踏んで、漏れなく、段階的に行ったことや、教育の世界に留まることなく、あらゆる機会を活用して積極的に説明や講話などを行ったことも、一気に「弁当の日」が普及していった要因かなと考えています。
さらに、教育長自らが決断され、リーダーシップを発揮されたこと、知事部局、JA、民間の有志の方々と連携できたことは、大きな力となりました。慣例に縛られることなく、広く、柔軟に手を携えたことはとても効果的だったと思いますし、他の「業界」の皆さんとコラボするのは、それなりのエネルギーは要しますが、純粋に楽しいものでした。
「弁当の日」に関しては、取り組んでさえいただければ、「弁当の日」自体が持つ力により、その意義や効果は自ずと実感していただけると感じています。丁寧にアプローチしていけば、自ずと受け入れられ、根付いていくのではないかと考えます。

Q 実施を目指している方々に伝えたいことは?

「弁当の日」には、取り組んでいただきさえすれば実感いただけるだけの固有の力があると感じています。「弁当の日」には、やってみるだけの価値が間違いなくあります。赴任した学校でも、「弁当の日」を体験しているからこそと思える子ども達の行動を目の当たりにしてきました。是非取り組んでみてください。

Q その後、県内で追加の取り組みはありますか?

県教育委員会として「弁当の日」関連の新規事業を設けたり、「弁当の日」に特化した大きな研修会などを計画したりすることはありませんでしたが、そもそもの目的が、県内の学校に隈なく広がり定着することだったので、約9割の学校で「食に関する指導の全体計画」に「弁当の日」が明記され、毎年実施されるなど、学校の教育課程に位置付けられている現状を見ると、導入当初に描いた目的やイメージは概ね達成された状況かと受け止めています。
ただ、個人的に気になることが二つありまして、一つ目は、せっかく小学校から取り組んできた「弁当の日」ですが、いわば社会への出口にあたる高等学校において未だ実施率が低いことです。導入段階を担当した職員として、在任中にしっかりと方向付けできなかった力不足を反省していますし、「みやざき弁当の日」に関する最も大きな課題ではないかとも感じています。
もう一つは、「会食」が憚られる新型コロナウイルスの影響かと思われますが、この数年、実施しない学校が出てきていることです。新型コロナウイルス収束後には、ぜひまた実施してほしいと願っています。
こうした状況を踏まえてかと思いますが、2022年、県教育委員会が、全ての新任校長(県立学校・公立小・中学校)を対象とした研修に「弁当の日」の講話を盛り込みました。私に依頼がありましたので、草創期からの歩みや意義など、魂を込めてお話しさせていただきました。

小・中学生の3きょうだい揃って

小学校での実践

中学校の「おにぎり弁当の日」、おかずは学校前の海で調達

高等学校で、もちろん男子も作ります