仙台市は伊東豊雄氏が設計した仙台メディアアークが会場に(撮影ryo isozaki)

仙台市は伊東豊雄氏が設計した仙台メディアアークが会場に(撮影ryo isozaki)

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今年夏に開催される東京2020パラリンピックに向け、パラスポーツへの理解を深め大会の機運醸成を図るため、パラスポーツ選手のユニホーム姿と顔の表情と裸体の巨大な写真を合わせる形で展示するユニークな写真展が、このほど仙台市と岡山県矢掛町で開かれた。撮影したのはイタリアのファッションブランド「ベネトン」の広告写真で有名なオリヴィエーロ・トスカーニ氏で、モデルはイタリアの男女12選手。スポーツを謳歌(おうか)する喜びにあふれた姿と彼らが障害者であることを示す裸体が、縦3メートル、横2メートルの写真で対比される。

▽著名写真家トスカーニが撮影

仙台市、矢掛町とも大会前の事前キャンプなどでイタリアチームを受け入れるホストタウン。題して「NAKED.」の写真展は、ローマでの展示が好評だったことから日本でも開催されることになった。イタリア・パラリンピック委員会が全面的に協力し1月15日から17日まで矢掛町、1月30日から2月3日まで仙台市で開かれた。

NAKEDは「裸の」という意味。選手たちのユニホーム姿は堂々としてたくましくりりしい。表情も柔和だ。一方、裸体では手首から先がない、片脚がない、それどころか太ももから下の両脚がない、といった衝撃的な姿が目に飛び込んでくる。しかし、いずれも表情に暗さはなく、伝わってくるのはすがすがしさと肉体の美しさ。さわやかな印象だけが残る。商業的な写真の中に貧困や人種差別などの社会問題を織り込み、高い評価を得たトスカーニらしい手際だ。

裸体になると障害が明らかに

裸体になると障害が明らかに

仙台メディアテーク6階の仙台会場を訪れていた小槙量子さん(22)=学生=は、地下鉄のポスターで写真展を知り、トスカーニに興味を持ち、足を運んだという。パラスポーツの知識はなかったが「ユニホーム姿を見た後、裸体写真を見た時は緊張感があった。今まで見たことがない写真だったが、一人一人に人生があると感じた。全体的に明るいという印象」と感想を話してくれた。

▽肉体の迫力と美しさ

主催した仙台市文化観光局の三井悦弘オリパラ事業担当課長は、コロナ禍の中、開催には神経を使ったという。多くの人に見てもらいたかったが、感染防止を考慮し来場者数も制限せざるを得なかった。それでも「1日あたり百数十人が来場してくれた」という。来場者からは「美しさに圧倒された」「選手が生き生きしている」「パラスポーツについてもっと知りたい」といったさまざまな感想が寄せられた。中には「コロナ禍でパラリンピックは中止すべきと思っていたが、開催してほしいと考えが変わった」という感想もあったそうだ。

矢掛町で今回のイベントを担当した企画財政課の坂本祐樹さんは「裸体を含んだ写真展であることから、来場者からどんな反応があるか心配する部分もあった」という。しかし、写真展には幼児から年配者まで幅広い層が来場し「みなさん、世界と戦う肉体の迫力と魅力ある表情に圧倒されていました。障害のある部分を隠さないといった写真展の趣旨も理解していただき、もっと長く開催してほしい、知り合いにも見に来てもらいたいなど、前向きな意見が多く寄せられました」と手応えを話してくれた。

矢掛町では多くの住民が訪れた

矢掛町では多くの住民が訪れた

 

▽次は受け入れ準備

トスカーニが提示した世界観は、日本でも多くの人の共感を呼び、パラリンピックへの理解が進んだ。これで本番前の準備は終わり、これからは実際の受け入れの用意が始まる。三井さんは「住民との交流や公開練習をどう実現するか、選手団のコロナ対策をどうするかなど、やるべき事はたくさんあります」と気を引き締めていた。

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