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■「酒かす」を有効活用したスイーツの新ブランド

「日の出みりん」の醸造元として名を知られる調味料メーカー、キング醸造(兵庫県稲美町)。今年、「酒かす」を使ったスイーツとスムージーの新ブランド「ORYZAE JOY(オリゼージョイ)」を立ち上げ、ネット販売で展開している。

1900年(明治33年)に生まれた同社。創業120年を記念し、SDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けて立ち上げられた新ブランドだ。「オリゼー」の由来は、しょうゆ・みそ・日本酒・みりん・酢など和食を支える伝統調味料作りに使われるニホンコウジカビの学名「アスペルギルス オリゼー」。ユネスコ無形文化遺産にも登録され(2013年12月)、世界中から注目を集める「和食」を支える「発酵食品」(微生物などの作用で食材を発酵させて加工した食品)を、日常生活で手軽に楽しんでほしいという願いが込められている。

シンプルで職場のデスクに置いても違和感のないオリゼージョイブランドのパッケージ

シンプルで職場のデスクに置いても違和感のないオリゼージョイブランドのパッケージ

■「エシカルスイーツ」として誕生したチョコレートスイーツ&スムージーの素

近年、国内外で、地球環境や人・社会・地域に配慮した行動という意味合いの“エシカル”な考え方に基づく消費である「エシカル消費」「エシカルファッション」などが注目されている。みりんや日本酒を製造する過程で生まれる副産物である醸造かすは、キング醸造で年間数百トン生成されるという。それらを有効活用する「エシカルスイーツ」として登場したのが、「CHOCOLAT SAND(ショコラサンド)」(ミルク・ビター、いずれも5個入り税込み1,836円)、「CHOCOLAT CRUNCH(ショコラクランチ)」(カカオ・ミルク・ホワイト、いずれも1パック同756円)。

しっとりしたクッキーでチョコを挟んだ「ショコラサンド」、ザクザク食感の「ショコラクランチ」のいずれも、ベルギーのカレボー社製のチョコレートを使用。白米と比べてたんぱく質や食物繊維、葉酸やナイアシンなどのビタミンが豊富に含まれる酒かすを、同社独自製法でぎゅっと濃縮した“酒かすパウダー”をチョコに配合し、コクや味わいをさらに深めている。

ショコラサンド(ミルク、ビター)

ショコラサンド(ミルク、ビター)

ショコラクランチ(カカオ・ミルク・ホワイト)
ショコラクランチ(カカオ・ミルク・ホワイト)

水や牛乳に溶かして飲むスムージーの素にも、酒かすパウダーを配合。こちらは、青汁ベースの「SALADA LATTE(サラダラテ)」、国産ショウガベースの「GINGER LATTE(ジンジャーラテ)」の2種。どちらもクセが無く飲みやすい味わいだ(いずれも5袋同1,080円~)。

スムージー(ジンジャーラテ、サラダラテ)

スムージー(ジンジャーラテ、サラダラテ)

■ “酒かす嫌い”のプロジェクト責任者でもイケる!? 味を模索し重ねられた実験

同社のエシカルスイーツ開発の中心メンバー3人に、開発までの道のりを聞いた。「社の120年を記念したスイーツの開発」という点以外は真っ白な状態からスタート。社内で寄せられた

100近いアイデアを整理し、長年醸造業を続けてくる中で見落としていること、今後の事業に発展できることを模索。「大手がやらないニッチ(すき間)を攻めよう」「120年続いてきた我が社の味を出そう」「働く女性に好まれる商品を目指そう」という方向性と、今まで有効活用できてこなかった「酒かす」を使ったスイーツをネット販売に特化して展開することが決まった。

マーケティング担当の丸井慎太郎さんは、社内をはじめ自治体関係者、取引先など約100人の働く女性に webアンケートを実施。スイーツを選び購入する際のポイントを徹底的にリサーチした。浮かび上がってきたのは「ピンク色やフワフワした雰囲気などのかわいらしいイメージ」よりも、職場のデスクに置いても違和感がないパッケージデザインや、持ち歩きやシェアにも便利な個包装、仕事の休憩時間に食べる際にも静かに食べられる食感などだった。

並行して進められたのが、味の模索する“実験”。設計開発担当として商品の食材配合の研究などを担当する蕨野裕哉さんは、ご飯・みそ汁・スープ・キムチ・コーヒー・バター…。毎日さまざまなものに酒かすパウダーをかけて味わった。昨年の3月~5月にかけて約2カ月続いた実験。「これはイケる!」「この味はありえない…」。試行錯誤の上、方向性がつかめてきた。酒かすの配合の増減には、“酒かす嫌い”の同プロジェクト責任者・竹山慎一郎さんが食べられる味かどうかが大きなポイントに。そして、ほのかに感じられる酒かすの風味が味わいに深みをもたらす、そんなスイーツとスムージーの素が完成した。

左からマーケティング担当・丸井慎太郎氏、設計開発担当・蕨野裕哉氏、プロジェクト責任者・竹山慎一郎氏

左からマーケティング担当・丸井慎太郎氏、設計開発担当・蕨野裕哉氏、プロジェクト責任者・竹山慎一郎氏

■和風料理に限らず生かせる酒かすの力

蕨野さんは「当初、酒かすといって思い浮かんだのが甘酒とかす汁ぐらい。和風の料理に合うものだと思っていた」と話す。しかし、日夜の“実験”“試食”を重ねる中で、チーズやミルクなど乳製品のコク出しにも使え、いろいろな食材の魅力を引き出したり料理の幅を広げたりする酒かすの可能性を実感したという。従来も酒かすやみりんかすは廃棄せずに、家畜の飼料や浅漬けの「みりんかす漬けの素」などとして活用してきたというが、もっと“かす”を主役として押し出す製品への新たなチャレンジだった。

昨年初めから、新型コロナという世界的に未知だったウイルスが広まり、今もなお、人々の行動制限が自治体から要請され続ける中、健康を保つための食への関心が一層高まっていることが予想される。免疫力を高める食品として注目を集めている発酵食品については、農林水産省後援の「発酵検定」(主催:日本発酵文化協会・東京)が今年4回目を迎えるなど、日本の伝統食文化である発酵の素晴らしさを次世代へ継承していこうという機運が高まっている。実際、同社の感覚としても、コロナ禍で外食制限がされ自宅で料理する人が増える中、「これ1本で味が決まる」という万能調味料への傾倒傾向から、酒やみりんを含む単体での調味料への関心が高まっていることが感じられているという。

「完全調味料や添加物が使われている食品は、味のインパクトは大きいが、飽きてしまう点も。発酵食品は健康へのメリットでも注目されているが、それ以上に、季節の食材と合わせた時に、その食材の味わいを生かしつつ深みを出してくれる点が注目されているのでは」と丸井さん。

オリゼージョイの商品に添えるリーフレットには、「じっくりと時間をかけてご賞味ください」と添えた。酒かすがもたらす味の深みを感じてほしいという。

■海外からも注目される日本食

同社はスペインで、和食の料理教室を開催したり、レストランとコラボしての同社の調味料を使った特製メニューの展開、食材・調味料・レシピをセットにした料理キットの販売などを手掛ける中、現地の人々の和食への関心の高さを感じているという。

120年間地域に根差してきたキング醸造にとって、地元の顧客からの反応も大きな支えだ。「もっとコテコテの商品が登場すると思っていた」「キング、ようこんなカッコいいの作ったなあ!」。既に酒粕を使った新商品に向けた実験・試食が日夜着々と重ねられ、秋のリリースを目標にしている。「オリゼージョイの商品で使っているのは日本酒の製造過程で生まれる酒かすだが、みりんや料理酒を作る際のかすなど、今後利用できる選択肢は広い」と竹山さん。「醸造かすが深める食材の味わいを楽しんでほしい」と、開発メンバーたちも楽しみながらのキング醸造の挑戦は続く。

■ORYZAE JOY(オリゼージョイ)

・販売サイト:https://oryzae-joy.jp
・Instagram:https://www.instagram.com/oryzaejoy/
・Facebook:https://www.facebook.com/oryzaejoy
・twitter:https://twitter.com/ORYZAEJOY

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