登壇者パネルディスカッション
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男性の育児休業取得推進に取り組む積水ハウス。9月19日を「育休を考える日」と記念日制定し、昨年から企業で働く男性の育休取得実態を探る「イクメン白書」を発表している。今年も、全国の小学生以下の子どもを持つ20~50代の男女9,400人を対象にした調査結果を「イクメン白書2020」としてまとめ、9月17日に開催した「イクメンフォーラム2020」オンライン記者発表会で紹介した。
フォーラム冒頭では、積水ハウスが「わが家を世界一幸せな場所にする」をモットーに、男性社員の育休取得を進めていることを紹介。2018年7月に、「男性社員1カ月以上の育休完全取得」を宣言し、2018年、2019年度にweb参加形式のイクメンフォーラム(2018年は社内向け、2019年はメディア・一般向け)を開催。2019年には「育休を考える日」の記念日制定のほか、「イクメン白書2019」を発行してきたことなどが説明された。
今年の「イクメン白書2020」では、「夫の家事・育児実践数」「妻の評価するイクメン度」「夫の育休取得日数」などから総合的に判断した「イクメン県」を発表。1位「佐賀県」(205点)、2位「熊本県」(192点)、3位「福岡県」(191点)と、九州勢がトップ3を独占した。 また、男性の約8割が家事・育児に幸せを感じており、育休を長く取得した男性の方が幸福度を高く感じていることも明らかに。家事・育児に幸せを感じる男性は、幸せを感じない男性と比べて、家事・育児スキルが高く、仕事に対する生産性の向上については1.8倍、会社への愛着は3.3倍のスコアを記録していた。
課題として、パパ本人には育休取得の意志があっても「制度が未整備」「取りにくい雰囲気」など職場環境が大きな阻害要因となること、「給料維持」「仕事の調整」「職場の雰囲気」などに企業・組織が取り組むことや、パートナー・家族間の話し合い、育休中にカバーしてくれる同僚へのフォロー、取引先などへの配慮がしっかり行われることで、より良い形で育休を取れるようになるのではないかということが挙げられた。
後半に行われたパネルディスカッションには、NPOファザーリング・ジャパン ファウンダー・代表理事の安藤哲也氏、前内閣府男女共同参画局長の池永肇恵氏、フリージャーナリストの治部れんげ氏、積水ハウスのダイバーシティ推進担当者たちのほか、オンラインで鈴木英敬三重県知事が参加した。
ファザーリング・ジャパンの安藤理事
安藤氏は、「2006年にファザーリング・ジャパンを立ち上げた当時の男性の育休取得率は0.6%ぐらいで、昨年は7.4%。14年間で10倍以上にはなっているが、まだまだ女性の取得率との開きがある。スウェーデンのように当たり前のように取得できるように、職場の風土などの働き方改革、男性の意識・働き方改革を進める活動をしてきた」と活動を紹介。「イクメン県」として選ばれたトップ3が九州勢だったことについて、「ファザーリング・ジャパンの地方支部を初めて作ったのが、2009年、九州支部。保守的なイメージの強い九州男児をイクメンにすれば全国が変わるのではないかと思い、2010年から“九州パパサミット”を毎年開催してきて、九州には熱いイクメンパパがたくさんいることを感じてきた。今回の調査結果を見て、10年前から仕込んできたことが果実として実ってきたなあと感じた」と笑顔で語った。
オンラインで参加した三重県の鈴木知事
三重県を挙げて男性の育休取得や育児参画に積極的に取り組む鈴木英敬知事は、平成30年度の三重県の男性の育休取得率が全国一位、採用職員の女性割合が全国4位(平成29年度は1位)、厚生労働省発表の令和元年6月1日時点での障がい者雇用率が全国4位であることを挙げ、「男性の育休取得を考えた時に、多様な人たちが働きやすい組織を作ることが大事」と指摘。広い意味でのダイバーシティー推進を訴えた。
今回の調査では、男性の育休取得について、男女ともに8割以上(男性84.8%、女性82.4%)が賛成しているが、実際に「育休を取得したい」と答えた男性は60.3%、「夫に育休を取らせたい」と答えた女性は51.1%に。賛成スコアよりも低い結果となった。
フリージャーナリスト・治部氏
これに対して、子ども支援政策や男性の家事育児参画の専門家である治部氏は、日本の法律が定める、男性が使える有給の育児休業の期間が長いことなどを挙げ、「制度は整っており、企業や雇用主が、男性に育休取得を後押しする意識が必要だ」と指摘。積水ハウスのダイバーシティ担当・伊藤みどり氏は、「子どもは、父親・母親の両方から育てられる権利がある。子どもの可能性を広げ、家族のきずなを深めるために、ぜひ男性の育休取得にチャレンジしていただきたい」と話した。
積水ハウスダイバーシティー推進担当の伊藤氏
安藤氏は、「男性が育休を取得することが目的ではなく、取得して何をするかが重要」と育休の“質”の重要性を指摘。新型コロナウイルスの影響下での夫婦の協力体制にも触れ、「コロナ禍で夫婦ともに在宅勤務の中、夫がなかなか家事育児をやってくれず、余計大変になっているというママからの切実な声もある。トータル的に、在宅勤務やテレワークによる意識変容が起きたのは、半分ぐらいのようだ。この点についてどのように働きかけていくかが、これからの支援活動になっていくと思っている」と話した。