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戦争や災害、事件が起きるたびに問い直される“尊厳”。何気なく使っていても、いざその定義を問われると明確な説明が難しい。言葉の定義をとらえる作業は、それが表現するものの中身をしっかり考えることと同義だ。その教科書として ふさわしい「尊厳―その歴史と意味」( “Dignity: Its History and Meaning”-Harvard University Press- マイケル・ローゼン著)の翻訳本(岩波新書、税別840円)が出版された。
西洋社会における尊厳概念の歴史がひもとかれ、現代になって実際に尊厳が問われたドイツやフランスの判例が紹介されている。なぜ私たちは生きている人間にだけではなく、死者の尊厳にも敬意を払うのか、という哲学的な議論も展開される。
翻訳を手がけた内尾太一麗澤大学准教授は、東日本大震災の被災地で行った5年間のフィールドワークに基づき、『復興と尊厳―震災後を生きる南三陸町の軌跡』(東京大学出版会)を2018年に出版。「フィールドワーク中にローゼンの原書を読み、いつか訳したいと思っていました」とし、「ポスト3.11、そしてアフターコロナの日本社会にも重要な示唆を与えてくれるはず」とコメントしている。