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現代社会でストレスを感じない人は、まずいないだろう。職場やプライベートの人間関係、仕事の重圧、睡眠不足――。さらに新型コロナウイルスの感染拡大により、失業や倒産の不安、テレワークが原因の運動不足、外出自粛でストレス解消手段の減少などが追い打ちをかける。これらのストレスに負けない心の「レジリエンス」と食事をテーマにした東京ガス主催のセミナーが2月8日、東京都内で開かれ、帝京大医学部精神神経科学講座教授の功刀浩(くぬぎ・ひろし)さんと、リストランテ「カビアーノ」(東京都目黒区)シェフの植竹隆政さんが、心を元気にする食について解説した(講演会の動画は「東京ガス『食』のセミナー」のWebサイトで公開している)。
三つの生活習慣でバリアーを
「レジリエンス」とは回復力、復元力や乗り切る力を指し、心理学だけでなくシステム論や防災分野などでも使われている。精神疾患の栄養学的側面や食事療法に注目して研究を続けている功刀さんは「ストレスをはね返すのは、食事、運動、睡眠の三つの生活習慣のバリアー」とした上で、コロナ禍での対策として「朝食をしっかり取ること」を求めた。「朝食は王のように、昼食は王子のように、夕食は貧乏人のように」と、朝食の重要性を指摘する海外の栄養学者の言葉を紹介。単に食べればいいというのではなく「夜食を食べず早起きしないと、朝食がしっかり食べられない」わけであり、生活習慣全般の改善が欠かせないと強調した。
現代の食事は問題を抱えている。カロリーの取り過ぎで肥満が増える一方で、食物繊維やミネラル、野菜などは不足し「飽食なのに栄養バランス不足」という状況にある。「大昔は食事が明日もあるかどうか分からないという生活だったので、人間には食べられるときに食べてためるという遺伝子が組み込まれている」。現代では“食いだめ”の必要がなくなったのに、遺伝子は変化していないため適応できていないのだという。
食事と病気との関係も次々と明らかになってきた。功刀さんによると、脂肪酸、アミノ酸、ビタミン(B1、B6、B12、D、葉酸)、ミネラル(鉄、亜鉛、マグネシウム)などが不足すると、元気のもとになるドーパミン、精神安定にかかわるセロトニンといった神経伝達物質の合成や代謝がうまくいかなくなり、うつ病になりやすくなるという。
心のレジリエンスを保つ料理として功刀さんが挙げたのが、魚介類や野菜、オリーブオイルを主とし、必要な栄養素が豊富に含まれた地中海式食事だ。疾病予防に有効と考えられる5食品(果物、野菜、豆類、穀類、魚)、発症を促進すると考えられている肉、アルコールなどの摂取量をスコア化し、うつ病発症との関係を探ったスペインでの疫学調査では、地中海式食事スコアが高かった人たちは、低かった人たちに比べ、発症率が低かったという。
仕上げはオリーブオイル
セミナー後半では、日本における自然派イタリアンの第一人者である植竹さんが、2種類の料理を披露した。植竹さんは、野菜本体が持つ滋味を追求し、ニンニクや唐辛子、バター、クリームなどを極力使用せず、オリーブオイルや野菜などの自然の味わいを大切にしているという。
「トリレバーとドライポルチーニ 春菊のスパゲッティーニ」は、ポルチーニ、トリレバーをソテーし、ゆであがったスパゲッティーニとあえて、EXオイルとパルミジャーノを混ぜ合わせて完成。
「白身魚のポワレ ミニトマトとバジリコのソース 冬野菜のリゾットと3種類のキャベツのソテー添え」は、マダイと3~5月が一番おいしい季節というアサリに、白菜、九条ネギ、大根のほか、黒、紫、ちりめんの3種類のキャベツを炒めて添え、仕上げにEXオイルを回し入れた。「バジリコは包丁を押して切ると苦くなるので、引いて切るのがコツ」だという。
「うつ病にならない朝食」
植竹さんのプロの料理に対し、功刀さんは日常的な料理の一例で「うつ病にならない朝食メニュー」として①全粒穀物(玄米など。量は控えめ)②野菜、海藻、キノコなど具だくさんのみそ汁またはスープ(塩分控えめ)③豊富な野菜とタンパク質(肉、魚、大豆、卵)④果物、乳製品(腸内細菌改善)⑤お茶、コーヒーを紹介した。
ストレスに強い心を保つために、こうしたバランスの良い食事に加え、残り二つのバリアーである運動、睡眠を意識し、生活習慣全般を見直すことから始めてはどうだろうか。